便秘解消あなたはどっち? だんぜん薬派VSぜったい食事派
何日、便が出ないと便秘っていうのだろうか?
今日は、恥をかなぐり捨てて、悩みを聞いてもらおうと思っているの。実は、もう4日間もお通じがないのよ。
君も?そうか、ご同病というわけか。私も、5日間ない。いや、仕事をしている頃はほとんど便秘などしなかったんだが、定年後はしょっちゅうなんだよ。私のほうが1日、勝ったな。
勝った負けたの問題じゃないでしょ。お通じがなくても苦しくなければいいんだけど、下っぱらもポッコリと出ちゃうのよ。これはスタイルに響く。
いったい、何日出ないと便秘というのだろうな。うちの家内などは、若い頃から3~4日ぐらい出ないことはしょっちゅうだったが、平気な顔をしている。ところが、私は、苦しいんだよ。
便通というのは個人差があってな、1日出ないと気分が悪くなる人もいれば、3日も4日も出なくても平気な人もいる。だから、何日出ないと便秘と決めることはできんのだが、こういうことはいえるかな。3日以上お通じのないのが長年に渡って続いているとか、毎日出てもうさぎの糞みたいなコロコロとした便がほんの申し訳程度にしか出ないとか、おなかが張るだけでなく全身的な悪影響が出ているとか、そんな場合は便秘ということになるだろうな。
まさにぴったり。もう20年以上のお付き合いなんだから。自分でもわかってはいるのよ、ほらこの体型見ればわかるでしょう? そう、ダイエットを始めると便秘がひどくなっちゃうのよね。
私は便秘との付き合いはまだ4~5年なんだ。会社を定年になるまでは快食快便だったんだが、仕事をやめて家にいるようになったら、不快食不快便になってしまった。きっとストレスと運動不足が原因なんだろうな。
なんだ、二人ともちゃんと原因がわかっているのではないか。でも、さっきから泣き言をいっているということは、便秘解消にはほど遠いな。よし、それじゃ、きちんとした対策を立てるために、まずは少々脅かしてみようかな。
女性のほうが便秘傾向が強い。40~50代が多いのは、中年太り解消のためのダイエットも一因と思われる。男性は、定年後の運動不足や目的意識喪失によるストレスが大きい。
便秘には、こんなに恐ろしい副作用があるって知ってた?
便秘の悪影響というと、誰もが知っているのはニキビや吹き出物じゃな。便秘をすると、身体にとって有害な物質がいつまでも体内に残ってしまうので、これが悪さをするのじゃ。とくにニキビは若い女性に多い。
うちの娘も便秘なんだけど、ニキビがひどいのよ。薬をつけてもぜんぜんダメ。私に似て美人なのに、ニキビだけが玉にキズでね。ほんと、美人なのに。
娘自慢はそれぐらいでいいかな? それじゃ、脅しを続けるぞ。次に問題なのは、頭痛、肩こりなどの原因になることだな。また、コレステロールが外に出ていかないものだから動脈硬化が促進されて、高血圧や心臓病、脳卒中などの原因になることもある。さらに、大腸がんを引き起こす可能性もある。
大腸がんね。これは、確かに恐い。でも博士、なんで便秘が大腸がんを引き起こすことになるんですか?
よろしい、ごくごく簡単に説明して差し上げよう。腸の中には100種100兆個もの細菌が棲んでおるのじゃが、便秘になると細菌のバランスが崩れて、脂肪の消化のために分泌された胆汁酸が分解されにくくなってしまうのじゃ。そうすると発がん物質ができてしまうのだが、便秘だからなかなか外に出ていかない。それが腸管を刺激することになってしまうのじゃよ。
便をためたって、一つもいいことはないのね。でも、ダイエットと便秘って、どうして仲がいいのかしら。私の理想は、便通のあるダイエットなんだけど。
私だって、好きでストレスをためているわけじゃないし、足腰が弱くなるとゴルフもままならない。でも、ストレスで便秘になることってあるんですか?
大ありじゃ。ストレスが強すぎると自律神経が乱れる。排便は大脳の指令で行うものだから、排便のリズムも乱れてくるんじゃ。ついでにいうと、ダイエットによる便秘というのは、便の材料不足じゃな。食べたものが便になるまでには24~72時間かかるのだが、こうして作られた便が一定量に達したり、胃に食べ物が入ることによる刺激などで、便意が起きてくるんじゃ。だが、便の材料がなければ排便のサインは脳に届かない。そうすると、便はどんどん水分を吸収されて、もっと硬くなってしまう。コロコロ便じゃな。ところで、お二人とも、便秘解消のためにどんな対策をたてておるのかね。
私はだんぜん薬。だって、ダイエットをしているのよ、食事をたくさん食べるなんて、無理な話よ。水をたくさん飲むといいって聞いて試したけど、そんなもんじゃ頑として出ない。だから、便秘薬に頼らざるをえないの。
私はなんとか食事で解消したいと思っていろいろと試している。だが、まだ成功とまではいかなくてね。薬ではなく食事で快便、ぜったいこれでいきたい。
下剤は最初は効くけど、だんだん量が増える
あら、下剤はホントによく効くのよ。でもね、だんだん量を多く飲まないと出なくなってくるような気がするの。下剤の量は増やしても大丈夫なのかしら。
下剤というのは、大腸での水分吸収を妨げたり、腸の粘膜を刺激してぜん動運動を高めたりして便通を促すものなのじゃが、長年に渡って使っていると直腸の神経の反射が鈍くなってくる。それに、皮肉な話じゃが、下剤による便秘というものもあるのだよ。下剤によって大腸内の便が一気に出るわけだが、そのときにカリウムも一緒に出てしまう。カリウムの喪失は筋力を低下させる原因になるので、腹筋のような排便に不可欠な筋力も落ちるし、大腸を動かす筋力も低下してしまう。それによって、さらに便秘がひどくなるという問題が起きる。それに、心臓の筋力が落ちると、心不全一歩手前ということにもなりかねない。
ほらね、下剤なんて、身体にいいわけないよ。やっぱり食生活の改善だね。
いやいや、下剤を否定してしまうのもよくない。さっきも話したように、便を長い間、腸内にためておくとロクなことはない。だから、適材適所で下剤を賢く使うことも悪くはない。だが、そのときにはなるべく習慣性にならないような、作用のやさしいものを選ぶことじゃな。食物繊維が含まれていて、便に水分を含ませて量を増やすような薬とか、腸のぜん動運動を高めすぎずに穏やかに作用する薬などは習慣性の心配はない。薬局・薬店で相談するといいな。
でも、やさしい作用の薬が、私のような頑固な便秘に効いてくれるかしら。
だから、一緒に食生活も変えていけばいいんだよ。ねえ、博士、そうですよね。
その通り。薬は賢く利用し、かといって薬に頼り過ぎず、食事にも気をつける。これが便秘解消の極意じゃな。
便秘を苦にして下剤を連用すると、その下剤の作用が強ければ強いほど激しい下痢が起きる。下痢をすると便と一緒にカリウムが排出されて低カリウム血症になり、いきむときに必要な腹筋の低下や腸のぜん動運動の低下をもたらし、これがさらに便秘を促進するという悪循環に陥りやすい。また、下剤を飲まないと排便 できないのではという精神的な依存や、しぶり腹による残便感も抱きがちに。下剤は、作用が穏やかで習慣性のないものを、どうしても排便できないときに限って用いるようにしたい。もし、常用量を超えている場合は少しずつ減らしていく。
食事に注意して、快食・快便を目指そう
食事に注意っていっても、私や娘はダイエット中だということを忘れないでね。便秘は治ったけど、太ったなんていうのはお断りですからね。
大丈夫、便秘解消のための食事は、ダイエット食でもあり、生活習慣病予防のための健康食でもある。私に任せなさい。
でも博士、辛いものを食べて便通を促すというのも、お断りですよ。実は、私、痔なもんですから。
ほう、痔主かね。よしよし、肛門に負担をかけないことも保証しよう。まず、なにより心がけたいことは、朝ご飯をしっかり食べることじゃな。排便したいという刺激を脳に送るわけじゃ。それから、毎回の食事で食物繊維をたっぷりととる。食物繊維というのは、腸の中に入ると水分を吸って10倍から15倍にも膨らんでくれるのだよ。つまり、便の量を増やしてくれるんじゃ。食物繊維にはカロリーがないから、ダイエット中でも心配ない。それに、腸内の善玉菌を増やして、発がん物質が作られるのを阻止するだけでなく、コレステロールや発がん物質を吸着して体外に出してしまうという働きもある。
すごい! 体重が増えなくて便が増えるんだったら、こんなにいいことない。
痔主にも食物繊維はいいんですか?便の量が多くなると、痛そうだな。
痔を悪化させない排便というのは、大きさではなくて、柔らかさなんじゃよ。硬い便をいきんで出すと鬱血して痔は悪化する。柔らかい便を力を入れずに出すのが、痔にはいちばん優しい。
食事じゃぜったいに便秘は治らないと思ってきたけど、試してみようかな。
いや、私も食生活を改善しつつ、どうしてもダメなときにはやさしい便秘薬も試してみるかな。
お二人とも、素直でよろしい。便秘は一日にして治らず。できれば、毎日、適度な運動をして、細胞の一つ一つを元気にすることも大事じゃな。ストレス解消にもなるし、ダイエットにも効果的。それに、運動をして気分がよくなると免疫力も増してくるんじゃよ。
【ひと口に食物繊維といってもいろいろ。】
【効率的に食物繊維を摂るための参考資料「食物繊維ランキング」】
上のグラフは、約1食分でとれる食物繊維の量を表したもの。1日にとりたい食物繊維の量は20~25グラム。食物繊維は加熱しても損失がないので、生野菜でとるよりも煮ものや温野菜にしたほうがカサが減って効率よく摂取できる。和食の献立がおすすめ。